今から、13年程前 。。
縦目の主治医 中森さんから、私のメールマガジンに寄稿して戴いた記事の再掲載

今回は、ミニの話を

英国車で最も馴染み深いのは、やはりミニでしょうね。
戦後、各国で安い自動車を国産化するのが復興の政策の目玉となりました。

コストの安い輸送手段を作る目的だけでなく、自動車は鉄工からガラス、タイヤそしてシステムオートメーションまでを含んだ総合産業なので、技術力の底上げになるからでした。
イタリアのフィアット500、西ドイツのVWビートル等が発売され、殊にビートルは世界中で評価されて一級の輸出品となり、どんどん外貨を稼いだのです。

1964年初頭、英国の雇われ技術者アレック・イシゴニスは「既存のユニットを使ってたっぷり四人乗れて100キロ出る安い車を設計しろ、駐車に有利な様にボディは可能な限り小さく!」と命令されました。
あるのは当時としても旧態然としたOHVのA型エンジンだけで大きさはフランスで一番狭い道を通れるのが条件なので自ずと決まっていました。

殆んど無理難題です。
ここからイシゴニス氏が天才ぶりを 発揮しました。

今、世界の乗用車の八割以上を占める横置きエンジンのFFと云うレイアウトは彼がミニで初めて提案したのです。
彼の設計したミニは、世界中にセンセーションを起こし、英国の外貨獲得に多大な貢献をしたとして彼は女王陛下から爵位を与えられ、「サー・アレック・イシゴニス」となりました。(英国王室は外貨を稼ぐ人が好きみたいで、ビートルズにもMBE勲章をあげましたよね。)

イシゴニス博士は折衷案の天才で、ミニはハンドリングのクイックさは素晴らしいのですが〈10インチのみ!〉、これはミニのサスペンションが効いています。
先代ミニは世界で只一つ、スプリングが金属で無くゴムの車で。

理想バネと云う概念があります。
軽い負荷で柔らかく、大きな負荷には漸次硬くなるのが理想バネで、コイルでは無理なのです。

ゴムは理想的なバネに成り得る材質ですが、脆くてミニの様な軽さで無いと成立しません。
軽さが成立させたとは云え、この閃きは天才と呼ばれるにふさわしい と思います。

未だに世界中の車の設計者達は日夜スプリングの設計に悩んでいるのです。
ある設計者は云いました。「ミニに大衆車の全ての答えがある。」

小さな巨人、ミニ!

中森 広騎